詩人の茨木のり子さんによる、沖縄出身の詩人山之口貘の評伝を、詩とともに収めた本。
この本の扉に書かれた次の一文が印象的です。
生涯、貧乏神をふりはらうことができず、借金にせめたてられながらも心はいつも王さまのようにゆうゆうと生きぬいた愛すべき詩人。
貧乏ながら「精神の貴族」といわれ、人々に愛された詩人の姿が浮かび上がります。彼と出会った人々の間では、彼の記憶が物語のように語られ、伝えられていったようです。この本の童話風の文からもそのことがわかります。
一番印象に残ったのはこの詩。
博学と無学
あれを読んだか
これを読んだかと
さんざん無学にされてしまった揚句
ぼくはその人にいった
しかしヴァレリーさんでも
ぼくのなんぞ
読んでいない筈だ
誰にでもわかる言い方で、心をぐらりとさせるようなことを言う。どの詩にもそんな印象があります。主義や主張ではなく、自分の言葉でできている。
詩集も読んでみたいと思います。
山之口貘さんの詩に、フォークシンガーの高田渡さんが曲をつけて歌っています。
好きなうたです。
(動画中のクレジットでは作詞作曲:高田渡となっていますが、作詞:山之口貘です)
2 件のコメント:
「博学と無学」いいね~。
自分の言葉で語るって、案外難しんだよねえ。
>ちびちびさん
文章は、さらさらっと書けちゃうものほど、どこかから借りてきた言葉じゃないかと心配になります。(翻訳はそれでもいいことがあるけど)
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