2014年3月19日水曜日

映画『ドストエフスキーと愛に生きる』

 映画「ドストエフスキーと愛に生きる」を見てきました。ドストエフスキーのドイツ語への新訳に取り組む84歳の翻訳家、スヴェトラーナ・ガイヤーの日々を追ったドキュメンタリーです。

↓予告編




 翻訳とはなにか。「翻訳は左から右への尺取り虫ではない」。テクニカルな面を越えたスヴェトラーナさんの思いがあふれる作品でした。こまかく描かれる翻訳作業の様子も、翻訳者ならはっとさせられるはず。
 
 一方で、ウクライナ・キエフに生まれ、ソ連と(ウクライナを占領した)ドイツのあいだで揺れ動いた人生をふりかえる場面も、クリミア半島の問題がある今見ると、複雑な思いになります。歴史というのは個人のものであり、一通りではないのですね。
 
 一語一語を丁寧にえらび、ロシア語とドイツ語の単語の間にある「翻訳できないなにか」を考える翻訳作業の様子も、とても興味深いものでした。未熟とはいえ、同じ「翻訳家(者)」を名乗るものとして、身の引き締まる思いです。

 細かい部分でとてもきになったのは、スヴェトラーナさんの仕事机。上の予告編でも出てきますが、窓の前に大きな机がひとつおいてあって、その向こうに明るい森が見える。ああいう大きな机で仕事をしたいです。早速、大きな机の購入を検討中。

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 見に行ったのは、渋谷アップリンクという小さな映画館。今回の上映は、3つあるうち、座席数が40席の小さなシアター「UPLINK X」。前のほうにゆったりした一人がけソファー、後ろのほうにそれより小さな椅子があり、(空いていたので)何種類かの座席から好みのものを選べてとてもよかったです。

 前方のソファー席に座ったところ、深く沈み込むような感じで、同行の友人は心地よすぎて上映後立ち上がれなくなっていました。ぜひまたここで映画を観たい。