代官山の蔦屋書店で開催された、装丁家の坂川栄治さんの対談イベントに行ってきました。
訳書が出るとき、本の装丁を初めて見るときというのは本当にわくわくします。本のデザインの部分に翻訳者が関わることはないので(少なくとも私は)、それがどのようにして作られているのか、とても興味がありました。
おもしろかったのは、坂川さんはデザインをする本の原稿(ゲラ)はあえて読まない、という話。常に客観性を保ち、商品として考える距離感を維持するためにあえて読まない、のだそうです。かわりに、仕事を依頼してきた編集者さんとたくさん話をして、本について聞き出し、イメージを固めていくとのこと。「まるで医者が問診をしているようですよ」とおっしゃっていたのが印象的でした。
もうひとつ印象的だったのは、夢中で仕事をしている自分を冷静に見ているもう一人の自分がいる、というお話。そういう距離感を持てるときの方がいい仕事ができるとのことでした。プロフェッショナルとして仕事をするというのは、夢中になる部分と同時に、仕事全体のこと、仕事相手のことに冷静に目を配る意識も必要なのですね。
私はデザインという分野はどうも縁遠い気がしていて、デザイナーさんというと、おしゃれで都会的でちょっと冷たいイメージを抱いていたのですが、坂川さんは面白いお話がぽんぽん出てくる、気さくな方でした。色使いがおもしろいチョコレートの紙など、デザインのヒントになりそうなものを拾ってきてしまうお話なども素敵でした(そのチョコレートの色使いは、実際に本のデザインに使ったそうです!)。
上の「本の顔」には、本の装丁ができるまでの詳しい説明や、書体の話、これまで手がけた本などが紹介されています。知らずに手に取っていた本がたくさんありました。
上の「本の顔」には、本の装丁ができるまでの詳しい説明や、書体の話、これまで手がけた本などが紹介されています。知らずに手に取っていた本がたくさんありました。
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代官山の蔦屋書店は前から行ってみたいと思っていました。大きなフロアに書棚が並んでいる普通の書店のような配置ではなく、小さな部屋に分かれていて、そこを出入りしながら本を見ていく感じです(インテリアを説明するのが本当に苦手で・・・)。スターバックスもあって、そこで購入前の本を選んだり、店内にコーヒーを持って行ったりしてもいいらしいのですが、本にこぼしたりしないのかつい心配になりました。
そして坂川さんデザインの本を一冊購入。
マーセル・セロー、村上春樹訳「極北」。イベントの会場で席のすぐとなりに飾ってあったので、始まる前に読んでみたら、陰気な気配がすごく気になる本。北国育ちなのにさらに寒い場所が舞台の物語に惹かれるんですよね。というわけで、直感だけで購入。
実は、代官山に行くこと自体、初めてだったのですが、おしゃれというか何というか、気後れしてしまう街でした。