映画「ドストエフスキーと愛に生きる」を見てきました。ドストエフスキーのドイツ語への新訳に取り組む84歳の翻訳家、スヴェトラーナ・ガイヤーの日々を追ったドキュメンタリーです。
↓予告編
翻訳とはなにか。「翻訳は左から右への尺取り虫ではない」。テクニカルな面を越えたスヴェトラーナさんの思いがあふれる作品でした。こまかく描かれる翻訳作業の様子も、翻訳者ならはっとさせられるはず。
一方で、ウクライナ・キエフに生まれ、ソ連と(ウクライナを占領した)ドイツのあいだで揺れ動いた人生をふりかえる場面も、クリミア半島の問題がある今見ると、複雑な思いになります。歴史というのは個人のものであり、一通りではないのですね。
一語一語を丁寧にえらび、ロシア語とドイツ語の単語の間にある「翻訳できないなにか」を考える翻訳作業の様子も、とても興味深いものでした。未熟とはいえ、同じ「翻訳家(者)」を名乗るものとして、身の引き締まる思いです。
細かい部分でとてもきになったのは、スヴェトラーナさんの仕事机。上の予告編でも出てきますが、窓の前に大きな机がひとつおいてあって、その向こうに明るい森が見える。ああいう大きな机で仕事をしたいです。早速、大きな机の購入を検討中。
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見に行ったのは、渋谷アップリンクという小さな映画館。今回の上映は、3つあるうち、座席数が40席の小さなシアター「UPLINK X」。前のほうにゆったりした一人がけソファー、後ろのほうにそれより小さな椅子があり、(空いていたので)何種類かの座席から好みのものを選べてとてもよかったです。
前方のソファー席に座ったところ、深く沈み込むような感じで、同行の友人は心地よすぎて上映後立ち上がれなくなっていました。ぜひまたここで映画を観たい。
2014年3月19日水曜日
2014年1月15日水曜日
代官山で装丁のお話
代官山の蔦屋書店で開催された、装丁家の坂川栄治さんの対談イベントに行ってきました。
訳書が出るとき、本の装丁を初めて見るときというのは本当にわくわくします。本のデザインの部分に翻訳者が関わることはないので(少なくとも私は)、それがどのようにして作られているのか、とても興味がありました。
おもしろかったのは、坂川さんはデザインをする本の原稿(ゲラ)はあえて読まない、という話。常に客観性を保ち、商品として考える距離感を維持するためにあえて読まない、のだそうです。かわりに、仕事を依頼してきた編集者さんとたくさん話をして、本について聞き出し、イメージを固めていくとのこと。「まるで医者が問診をしているようですよ」とおっしゃっていたのが印象的でした。
もうひとつ印象的だったのは、夢中で仕事をしている自分を冷静に見ているもう一人の自分がいる、というお話。そういう距離感を持てるときの方がいい仕事ができるとのことでした。プロフェッショナルとして仕事をするというのは、夢中になる部分と同時に、仕事全体のこと、仕事相手のことに冷静に目を配る意識も必要なのですね。
私はデザインという分野はどうも縁遠い気がしていて、デザイナーさんというと、おしゃれで都会的でちょっと冷たいイメージを抱いていたのですが、坂川さんは面白いお話がぽんぽん出てくる、気さくな方でした。色使いがおもしろいチョコレートの紙など、デザインのヒントになりそうなものを拾ってきてしまうお話なども素敵でした(そのチョコレートの色使いは、実際に本のデザインに使ったそうです!)。
上の「本の顔」には、本の装丁ができるまでの詳しい説明や、書体の話、これまで手がけた本などが紹介されています。知らずに手に取っていた本がたくさんありました。
上の「本の顔」には、本の装丁ができるまでの詳しい説明や、書体の話、これまで手がけた本などが紹介されています。知らずに手に取っていた本がたくさんありました。
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代官山の蔦屋書店は前から行ってみたいと思っていました。大きなフロアに書棚が並んでいる普通の書店のような配置ではなく、小さな部屋に分かれていて、そこを出入りしながら本を見ていく感じです(インテリアを説明するのが本当に苦手で・・・)。スターバックスもあって、そこで購入前の本を選んだり、店内にコーヒーを持って行ったりしてもいいらしいのですが、本にこぼしたりしないのかつい心配になりました。
そして坂川さんデザインの本を一冊購入。
マーセル・セロー、村上春樹訳「極北」。イベントの会場で席のすぐとなりに飾ってあったので、始まる前に読んでみたら、陰気な気配がすごく気になる本。北国育ちなのにさらに寒い場所が舞台の物語に惹かれるんですよね。というわけで、直感だけで購入。
実は、代官山に行くこと自体、初めてだったのですが、おしゃれというか何というか、気後れしてしまう街でした。
2014年1月1日水曜日
2014年を迎えて
高尾山からの富士山(2013年11月) |
新年といっても、昨日と今日、地球が一回転しただけ。ただ、もし「1年」という単位がなかったらよほど自己管理がうまくない限り、ただ漫然と時間を過ごしてしまいそう。そう思うと、新年があって、気持ちをリセットできるのはすごくいいことだな、と思います。特に、締め切りのほかには、時間にあまり区切りがないフリーランサーには。
そういうわけで(?)、新年らしく、1年の目標というか、テーマ。
(1) 外に出かける機会を増やす(翻訳関係のセミナーや勉強会、そのほかの講演会)
(2) 本をたくさん読む (仕事も、それ以外も)
2013年、いろいろな分野のお仕事をいただけて、自分のやりたい分野、そしてやれる分野というのが(いい意味で)よく分からなくなってきました。もっと広がるのか、それともそのうちの1つに集約していくのか。いずれにしても、頭で考えて選ぶより、自然と流れで決まっていくのがベストな気がしています。その流れを生み出すエネルギーとして、インプットは増やしたい。そして、そのインプットの時間を作るためにも、またたくさんの仕事の機会を増やすためにも、
(3) 何でも「前倒し」で進める
というのも心がけたいです。無茶ではない範囲で、いつでも「先送りなし」の姿勢で、毎日過ごしていこうと思います。
改めて、2014年もどうぞよろしくお願いいたします。
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余談ですが、年末に買ったPC用の度なしメガネをかけて、この記事を書いています。
まだ少ししかかけてませんが、まぶしさが軽減したような。ただ、もともとメガネをかけてないので、メガネをかけていること自体がおもしろくてたまりません。小学生か…
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